
🟢 はじめに
💡【微小なネタバレを含みます】
この記事では、『anemoi』の世界を科学の視点から紐解くため、物語の序盤に登場する現象や設定に触れています。
各ルートの核心(エンディング等)に関する重大なネタバレはありませんが、これから新鮮な気持ちでプレイしたい方はご注意ください。
クリックして読む(物語の序盤の設定を含みます)
Key作品『anemoi』の作中、
があります。
真澄町に迫る巨大な台風。
夜の草原で風を読むスピカは「嵐が来るわ」と警告しますが、主人公の麦は巡り合いバーで健さんとやり取りしながら、こんなことを思います。
以前の記事で、
のお話をしましたが、今回のテーマである「台風」も、
であることが調べていて分かりました。
今回は、台風の原理について紐解いてみたいと思います。
🌪️ 台風は「巨大な熱エンジン」
台風は、例えるなら
です。
飛行機のジェットエンジンは「ケロシン(灯油)」を燃やして飛んでいましたが、
です。
台風は、以下の3つのステップで誕生すると言われています。
🌊 燃料を吸い込む(蒸発)
南の温かい海で、太陽の熱によって海水が蒸発し、大量の「水蒸気(湯気)」が発生します。
これが台風のエネルギー源です。
🔥 空へ昇って熱を放出する(発熱)
温かくて軽い水蒸気は、空高く昇っていきます。
上空で冷やされると、水蒸気は「雲(水滴)」に変わります。
物理学の世界には
という法則があります。
💧 超・低気圧の誕生
雲ができる時に放出された熱で、周りの空気がさらに温められ、上昇気流(上へ向かう風)がどんどん加速します。
すると、海面付近の空気が上へスッポリ抜けてしまうため、猛烈な「低気圧」が生まれます。
ここで、以前の記事で考察した「気圧の押し合いバトル」が発動します⚔️
📝「気圧の押し合いバトル」についての記事はこちら👇
ため、周りの高気圧が「隙あり!」と猛ダッシュでなだれ込んできます。
そして、
ことで、
が完成するのです。
📉 なぜ台風は北上すると弱まるのか?
南の海で発生した台風ですが、主人公の麦の言う通り、北上して日本付近にやってくるにつれてどんどん勢力が弱まっていきます。
北上すると弱まる理由として、台風には物理的弱点が2つあります。
⛽ 致命的な「燃料切れ」
台風の燃料は
です。
日本付近まで北上してくると、海の水が冷たくなります。
ため、蒸発する水蒸気の量が激減し、台風は
になって勢力が弱まっていきます。
⛰️ 陸地との「摩擦」
海の上はツルツル滑るので風が暴れ放題ですが、日本列島に上陸すると、
がたくさんあります。
これがブレーキ(摩擦)となって風の勢いが削り取られ、台風は
へと姿を変えていきます。
🟦 液体と気体
ここで、
という現象について掘り下げたいと思います。
そもそも「水」と「水蒸気」では、目に見えない「水分子」の状態が異なります。
水分子たちが「お互いに手をつないで集まっている」状態。
💨 水蒸気(気体)
繋いでいた手をパッと離し、「1人1人が猛ダッシュで飛び回っている」自由な状態。
ヤカンの水を火にかけると、水分子たちは
します。
しかし、100℃(沸点)に達すると、水の温度はそれ以上上がりません。
100℃(沸点)に達すると、水分子たちは熱エネルギーを
ではなく、
に全振りして使い始めます。
💦 自由を捨てる時に放つ「潜熱(せんねつ)」
では逆に、猛ダッシュしていた水蒸気が空の上で冷やされて
はどうなるでしょうか?
水分子たちには、
が残っています。
このままでは、
だからこそ、水に戻る瞬間に
のです。
このポイ捨てされたエネルギーこそが、
の正体です。
🌪️ 台風を巨大化させる「無限ループ」
これを踏まえて、台風の内部を見てみましょう。
南の海で何兆トンという水蒸気が空へ昇り、
とき、
すると、強烈なストーブのように上空の空気が温められ、
という法則によって、猛烈な上昇気流が発生します。
という恐ろしい無限ループに突入します。
これこそが、台風という熱エンジンが巨大化するカラクリです。
🤔 なぜ海面上で発生した暴風が大量の水蒸気を吸い込むのか?
ポイントは、
という自然界の法則です。
洗濯物を干すとき、
よね。
それと同じことが、
わけです。
このように、
ため、どんどん台風の勢力が大きくなっていくんですね。
台風は「温かい海」の上を移動している限り、自分自身で燃料を爆食いしながら巨大化し続けます。
そして、日本に近づいて海が冷たくなったり、陸地に上がって水蒸気(燃料)がなくなったりすると、このループが断ち切られて「ガス欠」になり、弱まっていく……というわけです。
📖 『anemoi』の物語と物理学
この自然界の法則を知った上で、スピカと麦のやり取りをもう一度振り返ってみましょう。
麦は
と経験則から知っています。
しかし、風を読むスピカは
「嵐が来るわ」
と、
ことを感じ取っています。
これは、近年の日本で実際に起きている
という気象の異常事態を暗示しているのかもしれませんし、
あるいはKey作品特有の
というスピリチュアルな力学が働いているのかもしれません。
いずれにせよ、「本来の物理法則(ガス欠で弱まる)」を知っているからこそ、
という、物語の異常性や緊迫感がビシビシ伝わってくるわけですね。
✍️ おわりに
ジェットエンジン:熱力学
台風:気象学
『anemoi』を通して学ぶ物理学のスケールは、留まるところを知りません。
次回も真澄町の風を感じながら、新たな発見を探していきたいと思います。